子どもの成長を11年間に渡って追ったドキュメンタリー

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Life at 7 - About the Series - ABC TV

 

オーストラリアのテレビ局ABC製作のドキュメンタリーを見た。

 

約1万人から選ばれた11人の一般家庭のオーストラリア人の子ども達を1歳から11歳の長期に渡って追跡調査したドキュメンタリーで、育児中の親子の確執、両親の離婚等の家庭内不和を子どもが乗り越える様子が生々しくも微笑ましく映し出されている。

 

このドキュメンタリーが面白いのは、以前に私が教育関連の本を読み漁っていた時に出てきた数々の心理テストが11人の子ども達に対して実際に行われるところを見れるところにあった。

 

たとえば、マシュマロテスト(マシュマロ実験 - Wikipedia)を幼児教育の本で読んだ時は、子ども達が目の前におかれたマシュマロの誘惑にもがく姿を描く事ができなかったが、実際にはマシュマロをじっと見つめてただひたすらに待つ子ども、試験管が部屋を離れた瞬間にマシュマロを食べてしまう子ども、マシュマロのテーブルから離れてひとり遊びを始める子どもの苦悩が見られてその姿が何とも可愛くて仕方がなかった。

 

褒め方の違いがパフォーマンス結果に影響するテスト( Claudia M. Mueller、1998

http://www.itari.in/categories/ability_to_learn/praise_for_intelligence_can_undermine_childrens.pdf)では、ある問題を解かせて正解した際に、その子どもについての才能(頭がいい等)を褒めた対象群とその子どもが正解に至ったプロセスや努力を褒めた対象群とでは、後者の方がその後により難しい問題、簡単な問題を解かせた場合の両方に於いてテスト結果が前者を上回ったという研究、では褒め方の違いで実際に短期間でこれ程までに子どものマインドセットとテスト結果に影響がでる事を垣間見れ、自分もこどもを褒めるときに今までよりももっとプロセス重視にしなければと反省させられた。

 

     

ドキュメンタリーでは所々で、

Creativity (創造力)

Resilience(ストレスに耐性、逆境を跳ね返す力?)

の重要性が強調されており、いずれも私達のホームスクール哲学に合致していたので、ホームスクーラー1年生の私としてはほっとしたものだった。

 

Creativityは狭義のアートのセンスにとどまらす、それが「考え方」を形作るという点でIQよりも大切だと最近の研究で示されてるとドキュメンタリーでは紹介している。

専門家達は現代の子ども達は大人の管理下の多忙なスケジュールをこなし、Creativityを発揮する機会が減っているが、Creativityは人生で遭遇する様々な問題に対処するための問題解決能力の根幹を成す点でとても重要なライフスキルであるという。

Creativityはまた、子どもがResilienceを体得する上でもとても重要であるという。何か問題が起こった際に、ストレス下でも折れないためには創造力を駆使し思考を柔軟にしてあらゆる解決方法を探りながら困難に立ち向かわなければならないからだ。

 

11人の子ども達に「自分をCreativeな人間だと思うか。」と聞いた場合、多くの子どもが自分をCreativeでないと思っていたのには驚いた。家庭や学校生活で上からの指示に従い続ける状況下で、Creativeである事はともすると大人からの叱責を受ける機会を増やしてしまう自殺行為なのだろう。

 

ある実験では、子ども3人でグループを作り、大きな用紙と各色の絵の具を渡した。

大人からの指示で子ども達は紙には好きな絵を描いてもいいいが、その際に使える色は黒と茶色の2色であると伝えらた。他に色々な色が目の前にあるのに、である。そうすると子ども達は、とても不満そうな顔をしたり、他の色が使いたいと文句を言ったりしながら絵を描き始める。そんな中、3人の中でたった一人、描き終わった絵の右下に黄色い絵の具で点をつけた女の子がいた。すると、残りの二人の子ども達は「Oh, my got!!」、「なんて事をしたんだ!!」、「やっちゃいけないって言われてただろ!!」とその女の子を注意した。黄色い点は与えられた大きな紙からしたら蟻のような小さなもので、そこに点をつけたからといって、最悪の事態となる訳でもない。それでも、彼女の些細なルール違反は、学校生活でルールに従う事に慣れた子ども達にとってはあってはならないものだったのだろう。

    

実は私自身、似たような光景を先日図書館で見た。

長男が図書館のお絵かきタブレットで遊んでいたとき、訳が分からずプリントアウトのボタンを押してしまった。すると隣に座っていた近所の学校に通う2年生の女の子が母親である私に、長男の過ちが信じられないという表情で必死に訴えてきたのである。図書館にそんなルールはなかったのだが、その子の通う学校が図書館をグループで利用する際にはプリントアウトボタンは押してはいけないと教師から言われていたようだ。彼女は私が長男を怒らない事が理解できないようで、不満な表情を浮かべて今度は彼女の母親に言いつけに行った。

 

もちろん、学校で集団行動をする際にはプリントアウトボタンを押されたら、困る人間がいるのも確かで、そうしたルールが存在したとしても理解はできるが、問題はルールをどの程度まで守るかまたは破るかの裁量を身に着けるのが学校生活をしている間は非常に難しいところにある。

私の学生時代を思い出すだけでも、数々のルール違反をしたが、学校集団の中でのルール違反に対する処罰は公開処刑のようなものでともすると、ひとつのルール違反によって友人から差別の目で見られたり、いじめの対象にされてしまう可能性がある点で非常にやっかいで、ほとんどの生徒はルール違反リスクを冒してまで、自己表現をしようとはしないだろう。

 

オーストラリアの学校というと、日本よりはルールに縛られない伸び伸びとした教育方針をみなさんは思い浮かべるだろうが、どちらも産業革命以降の統一規格の子どもを育てるための学校制度の元で成立している点では同じなので、本質的には大差がないと思っている。

 

     

 

11人の子ども達は学校制度と家庭の狭間でもまれながらも、11年の追跡調査中は比較的Resilientに育っていった。調査中にシングルマザーになった家庭、新しい父親を迎え入れた家庭、兄弟が亡くなってしまった家庭や家族の健康に大きな変化があった家庭もあったが子ども達はたくましく育っていた。経済状況や階級も全く違う11人であったが、ドキュメンタリーを見る限りでは、どの家庭も親が十分に愛情を子どもに注いでいるように見えた点では共通していた。

まだまだ幼い子ども達が逆境を乗り越えるにあたって、親からの信頼と愛情以外に必要な物はないのだろうと感じさせられた。

11人全員が幸せな人生を送られるように願っている。

 

番組はオーストラリアのNetflix(https://www.netflix.com)で現在視聴できます。